【武と音】#4 伝統楽器と自然と人とのつながり

【武と音】#4 伝統楽器と自然と人とのつながり

琵琶に限らず伝統楽器と自然、そして人間は、お互いに深く繋がりあっています。

伝統楽器は自然の素材から生まれ、その素材から奏でられる音楽は自然の息吹と言っても過言ではありません。人間と自然が共に調和し、共存してきた証、絆でもあります。

伝統楽器文化を支える自然(天然資源)

伝統楽器の製作には木材やその他の天然資源が欠かせません。
そのため、天然資源の保全は重要で、森林や生態系のバランスを尊重しながら利用をしていかなければなりません。
天然資源が適切に管理されないと、伝統楽器の製作に必要な素材が失われ、文化的な多様性も危機に瀕するだけではなく、この地球に生存している動植物の生命も脅かされる可能性があります。

例えば、琵琶で装飾などに使用されている象牙ですが、象牙の使用は野生のゾウの個体を脅かし、乱獲や密猟などの違法な取引を助長することがあります。

現在では、環境保護と動物福祉の観点から象牙の使用は制約され、代替素材が推奨されており、最近制作された琵琶では、樹脂や銀が代替素材として使用されることもあります。

象牙が装飾に使用されるようになった理由は定かではありませんが、象牙は硬度が高く変形しにくい事と細かいデザインが可能であるため、装飾に使用されることが多かったのではないでしょうか?

それ以外にも音(振動)への影響が少ないのも理由の一つではないかとも考えられます。(単純に贅沢品、富の象徴としてとも考えられますが…)

オゾン層回復と地球温暖化、明るい未来への一歩

前述の動物だけでなく、植物の保全も問題となっています。
近年、急激な木の伐採が進み、天然資源の確保がますます難しくなっています。
琵琶本体の素材として良い物とされている桑も、年々入手が困難になっているそうです。(裏表両面桑を使用した琵琶を総桑、表だけ桑を使用した琵琶を片桑といい、値段がかなり違ってきます。)
伝統楽器の製作者や演奏者は、採取された素材が安定した方法で入手できないと職を失う可能性も出てきます。今後、林業やリサイクル、代替材の導入など、環境に配慮した取り組みが必要です。

数年前に環境破壊によるオゾン層の破壊が報じられていましたが、最近では「オゾン層は回復軌道に乗っている」との報告もあり、「オゾンホールが見つかる前の1980年のレベルまで回復するには、2040年頃までかかる」と予測されています。

地球温暖化問題も、人間がお互いに協力し合えば解決できると私は信じています。

天然資源と音楽の共存を奏でる未来

地球の自然(天然資源)を守ることは、結局は音楽を守ることにつながります。
冒頭でも述べたように音楽は文化の一部であり、その根底には自然との調和です。
環境保護の取り組みは、伝統楽器の製作や音楽の未来を守る重要な一環ということをもっと多くの方に知って頂きたい…

壮大な話になってしまいましたが、地球の恵みを守りながら美しい旋律と伝統楽器の響きを次世代に引き継ぐためにも、人間がお互いに寄り添い、動植物と共存する努力がこれからの未来の為に必要だと感じる今日この頃です。

国摩 磨比人(くになずのまひと)

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